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26話 魔法による探索飛行と、賑わう町の発見

Auteur: みみっく
last update Date de publication: 2025-10-11 06:00:46

──興味が湧いたのか、エルもそらの真似を始める。

「シャゲキ!」

 しかし、彼女の手元から飛び出したのは石ではなく、淡い輝きを放つ氷の弾だった。パキン、と氷が弾けるような微かな音がした。

 弾は空中に飛び出し、3メートルほど山なりに弧を描きながら落下。

 エルは目を大きく開きながら、満面の笑みを浮かべる。

「出来たぁっ!! そらくん、そらくんっ!」

 ブロッサムは驚きながら呆れたように言う。彼女の心には、エルの才能に対する複雑な感情が渦巻いていた。自分は理論から入るのに、エルは感覚で習得してしまう。この違いが、彼女の「努力」に対する誇りと、エルの「天賦の才」への僅かな嫉妬を生んでいた。

「なんなのよ。もぉー」

 アリアも感動した様子で拍手する。

「スゴいのですっ!」

 そらは軽く笑いながら言った。

「もう少し頑張れば狩りも出来そうだね。あとは弾が飛ぶ早さと威力のイメージかな」

 アリアは拳を握りしめながら、力強く宣言する。彼女の瞳には、未来への希望が宿っていた。家族を失った悲しみは深く、消えることはないだろう。しかし、今、彼女は新しい場所で、新しい「強さ」を見つけ始めている。

──そらは、ふと考える。

(実は少し遠出を企んでいたが……今日は諦めよ)

 皆が魔法の練習に夢中になっているので、家にいるステフにも何か教えられそうだ。彼は、この少女たちを「守る」だけでなく、「育てる」という新たな役割を見出し始めていた。彼自身の「無気力さ」が、彼女たちの「成長」によって、少しずつ薄れていくのを感じていた。

 そらは、獲ってきた鹿を手に取り、静かに家の中へと足を踏み入れた。彼の腕には、獲物の重みがずっしりと伝わる。

 そらは、屋根付きの解体場を用意し、獲物を吊り下げられる器具や大きめのタライ、解体ナイフをステフに渡した。それらは全て、彼のアイテムボックスから取り出されたものだ。

 ステフは目を輝かせながら、驚いた声を上げる。

「わあぁ。スゴイです……何ですか……ここ?」

 そらは微笑みながら答える。

「ステフにも新しいことを覚えてもらおうと思ってさ。ここは獲物の解体場所だよ」

 しかし、ステフは少し戸惑いながら言う。彼女の顔には、動物の解体という未知の作業への不安が浮かんでいた。

「わ、わたし……解体なんてできないですよ……」

 そらは優しく励ます。彼の声には、彼女を信じる気持ちが込められていた。

「練習すればできるようになるし、練習をしなければできないままだよ」

 ステフは少し考えた後、決意を込めて頷く。彼女の瞳には、新たな挑戦への光が宿っていた。彼女は、家事を通じてこの家への貢献を感じていたが、さらに「食」を支えるという「不可欠な存在」となることに、静かな喜びと自負を感じ始めていた。

「……は、はい……やってみます……」

 そらは鹿の角にロープを結び、滑車に魔法を付与してあることを説明する。

「まずは大きめの獣は吊り下げて解体をした方がラクだよ。いちいち向きを変えたり、持ち上げたりしなくて済むから」

 ステフは素直に返事をする。

「はい」

──滑車の魔法のおかげで、鹿はスルスルと軽々と吊り下げられた。そらは鹿の下にタライを置きながら、解体の手順を説明する。

「こんな感じでお腹に切れ目を入れて……内臓を取って……食べる物と食べない物を分けて。後は革を剥いで……肉を部位ごとに切り取るだけだよ」

 ステフはそらの手元をじっと見つめながら、もう一匹の鹿を吊り下げて真似を始める。彼女の指先は、最初はぎこちなかったが、次第に慣れていく。

「内臓も食べられる物があって、栄養も高いんだよ。骨や革も色々と使い道があったり……たぶん、お金になるかもしれないから」

 レバーや心臓に腸など可食部分を教え、革は防寒着や防具に敷物、袋になる事も説明をした。

 ステフは、そらの説明に耳を傾けながら、手を止めてそっとレバーを持ち上げる。指先が震えていたが、目は真剣だった。

「……すごい、そうなんですね……大切に扱わないとですね」

 その言葉のあと、彼女は小さく頷きながら、内臓のひとつひとつを丁寧にタライに分けていく。まるで命の重みを感じ取るように、動きは慎重で、どこか祈るような静けさがあった。

「あ、あと……毛皮とか鳥に寄生虫がいることがあるから気を付けてね。あやしそうだったら熱湯を掛けちゃって良いよ。体中が痒くなって大変だから……」

「……えぇ!? はい。気を付けます」

 ステフは思わず目を見開き、手元の毛皮から一歩引いた。驚きと警戒が入り混じった表情でそらを見つめると、すぐに頬を赤らめてうつむいた。耳元の髪を慌ててかき上げながら、そっと毛皮に視線を戻す。

♢新たな家族との出会い、そして深まる絆

 そらは魔法で空を飛び、周辺の探索をしていた。冷たい風を切る感覚が頬を撫でる。眼下に広がる森や大地を、鋭い視線で捉えながら魔力を広げていく。

──しばらくして、遠くに人々が大勢集まるざわめきを魔力で捉えた。その方向へと滑るように向かうと、視界には土壁と木造の建物が密集する小さな町が現れた。活気に溢れ、人々が行き交う様子は、どこか温かみを感じさせる。土埃と人々の熱気が入り混じった、かすかな賑やかな匂いが、風に乗って彼の鼻腔に届いた。

 彼は町の外れ、人目につかない茂みの中にふわりと降り立った。足裏に乾いた土の感触が伝わる。身なりを整え、背負っていたバッグをしっかりと背負い直すと、彼は警戒しつつもゆっくりと徒歩で町へと向かい始めた。足元には、小石が乾いた土の上を転がる音が小さく響く。

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